有線イヤホンをしながら横にいる怪異を無視する
原告著作物1話5頁2コマ(2015年)
被告著作物3巻表紙(2020年)
【考察】原告著作物と被告著作物における演出表現・キャラクター設定・根幹コンセプトの対照分析および依拠性の検討
原告著作物および被告著作物における、(1) 有線イヤホンを用いた怪異の回避・無視表現と心理描写、(2) 「怪異が見えるだけの力を持つ普通の高校生がひたすら無視する」という基本設定と根幹コンセプト、ならびにそこから派生する具体的一致点について総合的な対照分析を行う。
1. 「有線イヤホンを用いた至近距離の怪異の自己暗示・徹底無視」における表現の共通性
原告著作物(第1話5頁2コマ)および被告著作物(第3巻表紙)において、キャラクターの配置、小物の選択、視覚的演出、ならびに心理描写(モノローグ)の構造に共通性が認められる。
- (1) 視覚的構図・キャラクター配置・アイテムの共通性
- キャラクターと怪異の配置: 主人公が中央に配置され、その真横・至近距離に異形(怪異)が肉薄している構図が共通している。
- 小物の共通性(小型ガジェットと有線イヤホン): 主人公が手元で小型ガジェットを持ち、そこから伸びる「有線イヤホン」を耳に装着している視覚的小物の選択・配置が共通している。
- 目線を合わせない演出: 有線イヤホンをつけたまま、目線の先にある怪異を意識から外し、目を合わせないことで「見えていない振りを決め込む」視覚的演出が共通している。
- (2) 「徹底無視・自己暗示」の心理描写および表現技法の共通性怪異が目の前に迫る状況において、自発的に「認識していない状態」を作り出すための内面表現・心理描写の演出構造において、以下のテキスト表現が確認される。
- 原告著作物の表現(モノローグ): 「無視無視無視無視。」
- 被告著作物の表現(モノローグ・背景文字): 「見えてない。見えてない。わたしは前髪の位置がただ気になってるだけ、なんにも見えてない。ほっぺの汗も車内が暑いだけ。となりには誰もいないし、何にも見えてない。」双方ともに、「見えている事実」に対し「見えていない」「無視する」と言い聞かせる自己暗示(徹底無視)のモノローグ演出を視覚的・テキスト的に重ね合わせる表現手法を採用している。
2. 主人公のキャラクター設定および作品コンセプトにおける共通点
個別の画面構成、演出技法、ならびにギャグ表現の展開にとどまらず、両著作物の中心軸となる「主人公の基本設定」および「物語を貫く根幹コンセプト」においても以下の共通性が認められる。
- 主人公の基本属性: 「特別な攻撃力や除霊能力を持たず、ただ『怪異が見えるだけ』の普通の高校生」というキャラクター属性が共通している。
- 物語の行動原理(作品の核): 「迫り来る怪異に対して攻撃や対抗をするのではなく、ひたすら『見えていない振り(徹底無視)』をしてやり過ごす」という独特のストーリーテリングおよび行動原理が共通している。
【小括】
本検証対象においては、単に「ホラー」や「霊が見える」といった一般的な題材・属性の共通にとどまらず、「対抗手段を持たない普通の高校生が、ひたすら無視することで怪異をやり過ごす」という特定の物語骨格・キャラクター設定における共通性が確認される。
こうした基本設定をベースとして、具体的な表現手法や視覚演出が重なり合っている状況は、被告著作物が原告著作物の創作的表現の根幹および具体的展開を認知し、それに依拠して作成された可能性を検討するうえでの重要な客観的材料になり得るものと考えられる。