脚にトゲの生えた多脚モンスター
メディアミックス(2021年)
- 作品タイトル: TVアニメ『見える子ちゃん』
- 原作: 泉朝樹(「WebComicアパンダ」連載/KADOKAWA刊)
- 監督: 小川優樹
- シリーズ構成・脚本: 猪原健太
- アニメーション制作: パッショーネ (Passione)
- 製作: 見える子ちゃん製作委員会
- 放送期間: 2021年10月3日 ~ 2021年12月19日(全12話)
- 著作権表示(コピーライト): ©泉朝樹・KADOKAWA刊/見える子ちゃん製作委員会
【検証1:特定モンスター造形およびパーツ構造の比較検証】
【主題】脚にトゲの生えた多脚モンスターにおける顔面造形および脚部突起デザインの比較分析
原告著作物『妖異可視ビジブル』(第3話2頁2コマ)および被告著作物『見える子ちゃん』(第3巻99頁1コマ・124頁・127頁2コマ)における、「蜘蛛のように脚が複数伸びる多脚モンスター」の口腔・顔面パーツ構造、ならびに脚部に配されたトゲ(棘状構造)の視覚的デザインの類似性について比較検証を行う。
本検証では、単なる「怪物」という一般的概念にとどまらず、【①開口部内部の歯列と上下・左右に配置された鉤針(こうしん)状装飾パーツの幾何学的構成 → ②多脚部分に配置されたトゲトゲ(棘状)の形状および表面テクスチャ → ③全体像における蜘蛛状の多脚レイアウト】という3つの具体的パーツ特徴の整合について整理・提示する。
【各造形・構造要素の具体的対照】
1. 口腔構造(歯列)と「鉤針状」装飾パーツの幾何学的配置
- 原告(3話2頁2コマ・中央アップ): 露出した口の中に無数の歯が生え、開口部の上下に鋭く湾曲した「鉤針(こうしん)状の装飾・牙状パーツ」が対向して配置されている。
- 被告(3巻127頁2コマ・中央アップ): 露出した口の中に歯が生え、開口部の左右・周囲に同様の「鉤針状の装飾・牙状パーツ」が環状・対向に配置されている。
- 分析(パーツデザインの一致): 単に「鋸歯状の口」を描くだけでなく、口の周囲に外側から覆いかぶさるような弧を描く「鉤針状の装飾パーツ」を幾何学的に配置するデザイン手法が一致している。
2. 脚部における「トゲ(棘状突起)」の形状・テクスチャ
- 原告(3話2頁2コマ・左アップ): 複数伸びる脚の関節・表面に、鋭いトゲ(棘)が無数に突出した形状をしている。
- 被告(3巻124頁): 湾曲して伸びる脚の各所に、トゲトゲ(棘状)が突出した形状・表面テクスチャが施されている。
3. 全体像としての「蜘蛛状多脚」レイアウト
- 原告(3話2頁2コマ): 頭部・胴体から外側に向かって放射状・多段に脚が伸びる蜘蛛状の多脚構成。
- 被告(3巻99頁1コマ / 3巻124頁): 人物の背後・側方に大きく脚を広げて覆いかぶさる蜘蛛状の多脚構成(設定画においても「ゴキブリみたいなトゲトゲ足」「クモみたいな形」と明記)。
【小括】
怪物デザインにおいて「多脚」や「鋸歯を持つ口」という個別の要素自体は、ホラー・ファンタジー作品において公知のアイデアの範囲となり得る。
しかしながら本比較検証が示す通り、①「開口部の周囲に鉤針状の牙・装飾パーツを対比配置する」という特有の顔面・口腔デザイン構造、②「脚の関節・表面に明確なトゲ(棘状構造)を配する」質感・テクスチャ表現、③および「人物に覆いかぶさる蜘蛛状の多脚レイアウト」に至るまで、独立した複数のパーツデザインおよび造形構成が高度に重複している。
これらの細部にわたる視覚的パーツ構造の符合は、単なる概念上の偶然とは言い難く、原告作品のビジュアルデザインに対する依拠性を示す客観的検証資料として提示する。
【考察2:両著作物における「蜘蛛型異形モンスター」の造形および表現構造の対照分析】
原告著作物および被告著作物(「善の母」)における蜘蛛をモチーフとした異形モンスターの造形表現について、実在の生物学的特徴との比較ならびに装飾的付加要素の共通性に関する対照分析を行う 。
- 生物学上のクモの解剖学的特徴においては、口元に毒牙(上顎)や触肢が存在するのみであり、関節部や口周囲に鋭利な「トゲ(棘状突起)」や多層的な装飾構造が自然発生的に形成されることはない
。しかし両著作物においては、共通して「蜘蛛型の脚構造」に対し、実在の生物には見られない鋭利なトゲ構造を付加した造形処理がなされている 。
口元・口腔部における特殊装飾の配置手法
- 原告著作物では頭部・口腔周囲および牙表面に対し、鋭利な角・トゲ状の造形装飾を付与することで異形性を強調している(添付画像等)
。一方で被告著作物においても、口元を左右から覆う・挟み込むようにトゲ状の突起構造を多層的に配置しており、「生物学的クモに存在しない口元のトゲ表現」という架空の付加要素のコンセプトが共通している 。
構成要素の置換・反転構造
- 両著作物の造形を比較すると、原告著作物における「脚部の鋭利なトゲ」および「口腔周囲のトゲ装飾」という要素の組み合わせに対し、被告著作物では縦横の配置変換や内外の方向性の反転(外向き・内向きの置換等)が加えられている
。これは単一の生物の単純な模倣ではなく、創作的なデザイン要素の組み合わせ(コンビネーション)を維持した上での改変を示唆している 。
【小括】
実在のクモには存在しない「脚部のトゲ」および「口元のトゲ・棘状装飾」という不自然な付加要素の組み合わせが共通している点は、自然物からの偶発的な発想の合致として説明することが不自然である。 したがって、本異形デザインにおける表現手法の共通性は、依拠性および創作的要素の連続性を補強する重要な客観的証拠として提示する 。
【検証3:被告設定表における言語記述と造形表現の矛盾、および依拠性の推認】
原告著作物および被告著作物における「多脚モンスターの脚部トゲ表現」について、被告側が作成したキャラクター設定表(画像2枚目)内の肉筆記述と、実際の生物学的特徴、ならびに原告作品の造形との相関関係について、さらに詳細な対照分析を行う。
1. 被告設定表における「ゴキブリ」記述と実際の生物学的特徴との乖離
被告著作物の設定表(画像2枚目)には、多脚のイラストに対し、被告自身の肉筆で「ゴキブリみたいなトゲトゲ足」との解説テキストが記されている。 しかしながら、生物学上、実際のゴキブリの脚部に存在する棘(とげ・脛節棘)の特徴は、以下のようなものである。
- 配置の全周性: 棘は脚の片側だけではなく、全体(両面)にわたって輪状、あるいは列状に生えている。
- 質感の差異: トゲというよりは、硬く発達した「刺毛(しもう・剛毛)」の集合体であり、両著作物に見られるような、骨格そのものが鋭利な円錐状に突出した「造形としてのトゲ」とは質感が異なる。
したがって、「脚の内側(片側)のみに、鋭利で巨大なトゲが列をなして生えている」という被告著作物の造形表現は、被告自身が言語化・モデルとした「ゴキブリの生態」とは、解剖学的に著しく矛盾しており、生物学的な模倣としては不自然である。
2. 「蜘蛛」および「ゴキブリ」の生態から逸脱した、架空のトゲ表現の合致
元の考察でも述べた通り、実在の蜘蛛(クモ)にも、関節部にこのような鋭利なトゲ構造は存在しない。 つまり、被告著作物における「多脚モンスターのトゲ足」は、蜘蛛の生態からも、ゴキブリの生態からも逸脱した、生物学的に根拠のない「架空のデザイン」であるといえる。
3. 原告作品の表現構造に対する、依拠と意図的な置換(反転)の推認
実在の生物(蜘蛛・ゴキブリ)に存在しない、この「多脚の片側に列をなす鋭利なトゲ」という架空の表現が、両著作物において高度に一致している点は、以下のような制作プロセスを示唆している。
- 原告著作物の表現: 脚部骨格に対し、鋭利なトゲが外側(前方)に向かって配置されている。
- 被告著作物の表現: 脚部骨格に対し、鋭利なトゲが内側(後方)に向かって配置されている。
「多脚の片側に鋭利なトゲを配する」という創作的なデザインの組み合わせを維持しつつ、その「トゲの方向」のみを内側と外側で反転させている構成が確認される。これは、被告側が原告のモンスター造形を認識(依拠)したうえで、トゲの向きを置換・反転させる等の改変を加えた可能性を示す検討要素として挙げられる。
【小括】
被告自身がモデルとした「ゴキブリ」の生態とは整合せず、また蜘蛛の一般的な形態とも異なる「多脚の内側に列をなす鋭利なトゲ表現」が選択されている点は、自然物からの偶発的な発想の一致としてのみ説明するには不自然な側面を含んでいる。
こうした生物学的な特徴とは異なる造形表現の共通性、ならびに「トゲの向き(内外)」のみを置換した反転構造は、被告側が原告著作物の具体的な造形表現およびその創作的要素を認識し、それに依拠して描写を行った可能性を検討するうえでの客観的な判断材料になり得るものと考えられる。
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